ピアノの練習中、オクターブが届かずに悔しい思いをしていませんか?「私の手が小さいから、この曲は弾けないんだ…」そんな風に、自分のせいにしていませんか?
その悩み、今日で終わりにしましょう。ピアノの1オクターブの幅は、世界共通で約16.5cmです。
そして、この記事は、その事実をお伝えするだけではありません。公的なデータを使って「あなたの手は決して小さすぎない」という事実を証明し、あなたのコンプレックスを自信に変えるための、具体的なピアノ処方箋をお渡しします。
読み終える頃には、手の大きさへの悩みが消え、新しいテクニックで憧れの曲に再挑戦したくなっているはずです。
ピアノの1オクターブは約16.5cm。まずはこの「基準」を知りましょう
あなたの長年のモヤモヤに、まず明確な答えをお伝えします。
ピアノの1オクターブ(ドから次のドまで、白鍵8個分)の幅は、約16.5cmです。
この鍵盤幅は、ヤマハ、カワイ、スタインウェイといった主要なメーカーや、国による差はほとんどなく、世界共通の標準サイズとされています。ちなみに、白鍵1つ分の幅は約2.3cmです。
なぜ、まずこの数字を知ることが重要なのでしょうか。それは、この16.5cmという数字が、あなたの悩みを客観的に見つめ直すための、ぶれない「ものさし」になるからです。今まで漠然と「私の手は小さいから」と感じていた悩みに、初めて明確な基準ができた瞬間です。
では、あなたの手は本当に「小さい」?公的データと比べてみましょう
「やっぱり16.5cmか…私の手だとギリギリだ」。そう感じたかもしれませんね。では、次にその「あなたの手」が、客観的に見て本当に「小さい」のかを検証してみましょう。
まず、お手元に定規があれば、親指の先端から小指の先端まで、思い切り広げた長さを測ってみてください。これを手の大きさ(スパン)と言います。

いかがでしたか?では、その数値を日本の公的なデータと比べてみましょう。
出典: 産業技術総合研究所 AIST 日本人寸法データベース 1991-92
このデータが示す事実は、非常に重要です。1オクターブの16.5cmに対して、平均的な女性の手のスパンの余裕は、わずか2.7cmしかないのです。
つまり、あなたの「オクターブがギリギリ届かない」という悩みは、決して特殊なことではなく、むしろ多くの日本人女性が共有する、ごく標準的な課題なのです。あなたの手が特別に小さいわけではありません。
手が届かなくても大丈夫!小さな巨匠たちが使った3つの魔法(テクニック)
「私の悩みは普通のことだったんだ…」と、少し安心していただけたでしょうか。
何を隠そう、私の手は1オクターブがギリギリ届くかどうか。昔は手が小さいことで本気で悩んでいました。でも、ある時気づいたんです。ピアノは指の力や大きさだけで弾くのではない、と。
歴史を振り返れば、手の大きさに関わらず、素晴らしい演奏を残したピアニストはたくさんいます。彼ら「小さな巨匠」たちは、物理的な不利を補って余りある、優れたテクニックを持っていました。
オクターブを弾くとき、「指を広げる」という意識を捨てて、「手首を柔らかく使う」という意識に切り替えてください。
なぜなら、多くの人が指を固定して力任せに鍵盤を押さえようとし、手首や腕をガチガチに固めてしまうからです。私がこの思考の変化を経験してから、無理な力を入れずに、豊かで響きのあるオクターブが出せるようになりました。
ここからは、あなたと同じ悩みを持つ方におすすめする、3つの魔法(テクニック)をご紹介します。
魔法1:音楽的な解決策「アルペジオ」
1オクターブが物理的に届かないという課題に対する最も美しく、音楽的な解決策がアルペジオ(分散和音)です。和音を同時に「ジャーン!」と弾くのではなく、下の音から上の音へ「ポロロン♪」と素早くずらして弾く奏法です。これは「弾けないから仕方なく」やるのではなく、ショパンなども多用した、れっきとした音楽表現の一つです。
魔法2:身体の使い方の工夫「手首の回転」
指を固定して180度に開こうとすると、手は緊張し、美しい音は出ません。そうではなく、手首の使い方を工夫しましょう。例えば「ド」のオクターブを弾くとき、まず親指で下のドを押さえたら、手首を少し右に回転させるようにして、小指を上のドに「運んであげる」イメージです。この柔軟な手首の使い方が、指の可動域を補ってくれます。
魔法3:物理法則の利用「鍵盤の先端を弾く」
鍵盤は、根元(奥側)よりも先端(手前側)の方が、テコの原理で軽い力で音が出ます。特に黒鍵が絡むオクターブでは、指が奥に入りがちですが、意識して鍵盤の先端を狙うことで、最小限の力で楽に音を出すことができます。
| ❌ NGな弾き方(力任せ) | ✅ OKな弾き方(脱力) | |
|---|---|---|
| 意識 | 指を限界まで広げる! | 手首で音を運ぶ |
| 手首の状態 | 固く、水平に固定されている | 柔らかく、回転できる |
| 音色 | 硬く、ミスタッチが多い | 豊かで、響きがある |
それでも不安なあなたへ。よくある質問Q&A
Q1.手を広げるストレッチは効果がありますか?
A1.無理のない範囲でのストレッチは、指の柔軟性を高める助けになります。しかし、やりすぎは禁物です。腱を痛める原因にもなりかねません。ストレッチ以上に、先ほどご紹介した「手首の使い方」など、演奏中の身体の使い方を見直す方が、はるかに効果的です。
Q2.鍵盤の幅が狭いピアノ(7/8鍵盤)って、どうなんですか?
A2.標準の鍵盤幅より少し狭い(1オクターブ約14cm)「7/8鍵盤」というものも存在します。もし身体的な負担が大きく、どうしても標準鍵盤に馴染めない場合は、選択肢の一つとして考える価値はあります。ただし、まだ一般的ではないため、設置されている場所が限られるのが現状です。
Q3.子供用のピアノはどうですか?
A3.子供向けのミニキーボードなどは、確かに鍵盤幅が狭く作られています。しかし、これらはあくまで入門用やおもちゃとしての側面が強く、タッチの感覚や音の表現力は本格的なピアノとは大きく異なります。大人の趣味として弾くのであれば、標準サイズのMIDIキーボードや電子ピアノで、今回ご紹介したテクニックを試すことをおすすめします。
まとめ:あなたのピアノは、もっと自由になれる
ピアノの1オクターブは16.5cm。そして、あなたの手の大きさは、多くの人と変わらない平均的なサイズです。
手の大きさは、あなたのピアノの可能性を閉ざすものでは決してありません。正しい身体の使い方と音楽的な工夫(アルペジオなど)で、その壁は必ず乗り越えられます。
さあ、もう一度、憧れの曲の楽譜を開いてみませんか?今度は、力でなく、賢さで。あなたのピアノは、もっと自由になれるはずです。
[参考文献リスト]
この記事を作成するにあたり、以下の情報を参考にしました。- ヤマハ株式会社:「楽器解体全書」